世の中には様々な人がいるが、その中には残念ながら
「話が全く噛み合わない人」
がいる。例えば、こんな具合だ。
上司:「昨日、顧客訪問が3件あったと日報に書かれてるけど、今期の受注に繋がりそうな成果があれば、報告してもらえる?」
部下:「あ、一つ困ったことがありまして。お客さんから会社の概要について詳しくわかる資料はないか、と聞かれたんですよ。」
上司:「(成果を報告しろと言ったのに……)会社案内なら、この前発注をかけたので、後ろの棚に入ってるよ。」
部下:「いえ、あれじゃダメなんです。」
上司:「なぜ?」
部下:「違うのがほしいということでした。」
上司:「(は?質問に答えろよ……)いえ、私が聴いているのは、「なぜダメなのか」だから、理由を教えてもらえる?」
部下:「うちの会社案内、サービス案内が不十分だと思うんですよね。」
上司:「あなたの意見ではなく、お客さんがなんと言っていたかを教えて。」
部下:「ですから、違うのがほしいと。」
上司:「(イライラ)いや、お客さんが、なぜこの会社案内がダメだと言っていたのか、聴いてないの?」
部下:「えーと、さっきも言ったとおり、サービス案内が不十分だったと思いますが。」
上司:「(イライライライライライラ)だーかーらー、あなたの感想ではなく、なんてお客さんが言ってたんだよ?」
部下:「あ、それは聴いてません。でも多分サービス案内のせいだと思います。」
上司:「(結局聴いてないのかよ)……わかりました。聴いてないと。ではなぜ、サービス案内のせいだと?」
部下:「会社案内を見せたら、サービス案内のところを見て色々と質問してきたからです。」
上司:「どんな質問があった?」
部下:「詳しくは忘れました。あと、秘密保持契約を締結してほしいと。」
上司:「(話題を勝手に変えるなよ……。)……もういい。秘密保持契約の話は後だ。話をもとに戻すぞ。」
部下:「はい。」
上司:「最初に言ったとおり、昨日の顧客訪問3件の成果を報告して。」
部下:「それなら、昨日すごいお客さんと話が盛り上がったんですよ。」
上司:「(ハア?)盛り上がったのがが成果?」
部下:「たまたま出身校が同じだったんですよ。」
上司:「(質問に答えろよ……)だから、仲良くなれそう、というのが成果なのか?」
部下:「成果、ではないですかね。」
上司:「(ハア?)お客さんと盛り上がるのは手段で、営業の成果はそこじゃないだろ。」
部下:「いや、でもお客さんとの人間関係は大事ですよ。」
上司:「(こいつ頭悪いな……)最初に「受注につながる成果を報告」と言ったはずだが。」
部下:「あ、スミマセン。特にそのお客さんからの注文はなさそうです。」
上司:「(怒)あhdそふあdなえうぃおdhがいg」
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コミュニケーションが全く噛み合っていない状況はよく見受けられる。
普段、他愛もない話をしているときには我慢できるが、仕事になるとこれは結構困りものだ。
上の場合は残念ながら、部下のコミュニケーション能力が著しく不足していると言わざるをえない。
特にマズいのは、以下の4点だ。
1.質問に答えていない。
「成果を報告してください」と言われたのに、「資料がほしい」と質問に答えていない。
優しい上司であれば、上のように話を聴いてくれたりするが、「アタマが悪いやつ」と思われてしまうことは避けられないし、仮にこの場がミーティングなどであった場合、他の人の時間まで奪ってしまう。
聞かれたことに端的に回答する。
2.自分の意見と、他人の発言の区別がついていない
上司が「なぜお客さんは会社案内ではなく、他の資料がほしいと言ったのか」と聴いているのに、「サービス案内な不十分だと考えている」と、自分の意見を述べている。
事実と意見を混同して述べるのは、上司に「ダメだこいつ」と思われてしまう原因の一つだ。
仕事においては、事実と、意見はしっかりと区別する。
3.話題を勝手に変えてしまう
「お客さんからどんな質問があったか?」と上司から聞かれているのに、「秘密保持契約を結んでほしいと言われた」と、話題をかってに変えてしまっている。
その場で出た話には違いないが、話題をコロコロ変えると、何も決まらないままに時間だけが経ってしまう、ということがよくある。
自分の話したいことを話題にしたい気持ちはわかるが、一つの話題が終わってから、次の話題に移ること。
4.相手の聞きたいことを考えていない
コミュニケーションの最も基本的な部分として、「相手の聞きたいことを話す」と言うものがある。
だが、コミュニケーションに対して無頓着な人は、相手の思考をしばしば無視する。
上の場合、上司は「今期の受注に繋がりそうな成果を報告しろ」と言っているにもかかわらず、部下は「成果」について深く考えずに発言しており、そこに重大なミスコミュニケーションが発生してしまっている。
上司が何度も同じことを聴いてくるのであれば、部下は上司の意図を検証すべきだ。
例えば、「受注につながる成果、の報告ですよね?」といったように。
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何気ない会話であれば、相手と噛み合わなくても会話になってしまうのが、人間の素晴らしいところではあるのだが、仕事において「噛み合わない」は、後に重大なトラブルに繋がる可能性もある。
至極当たり前のことなのだが、
・質問に端的に回答する。
・事実と意見を区別する。
・話題を勝手に変えない。
・相手の聞きたいことを常に検証する。
この4つを意識するだけで、コミュニケーションの効率は劇的に変わる。
「お前の言っていることはよくわからない」と言われてしまう人は、この4つのいずれか、または全てに不調がある。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】 ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。
(2025/6/2更新)
こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ——
「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。
【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
【著者プロフィール】
・筆者Twitterアカウント▶安達裕哉(人の能力について興味があります。企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働者と格差について発信。)
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(Photo:Marc Wathieu)